問題行動マガジンについて

問題行動トリオが、「問題行動」という言葉を巡って、気まぐれに、思うがままに綴るウェブマガジンです。
舞台やワークショップなどだけでは伝え切れない「問題行動トリオ」の知られざる本性を発信していきます。

問題行動トリオというユニット名は、2019年に、砂連尾理、佐久間新、野村誠の3名が《ノムラとジャレオとサクマの「問題行動ショー」ヨソモノになるための練習曲》を創作したことに由来します。このタイトルをつけた野村誠は、香港の巨大な福祉施設で出会ったこだわりの強い人々に対するシンパシーを、「問題行動」という言葉から考察しました。強いこだわりを曲げずに貫く態度は、ケアスタッフから「問題行動」と呼ばれ、排除されかねない。しかし、その姿は、社会からはみ出していくアーティストが独裁政治から敵対されたことと重なった、といいます。

3人の共通点の一つには、さまざまなバックグラウンドを持つ人々との共同制作を続けていることにあります。
自らの枠やさまざまな社会に張り巡らされた枠組みを飛び越え、はみだして自由になっていくことを強く願っています。
複数の視点を縦横無尽に行き来するように、さまざまなものをなぞり、触れ、そこにいないものも浮かび上がらせ、回路を開いていく問題行動トリオ。
人々の日常にある振る舞い、私たちを取り巻く自然、街、環境、あらゆる有機物無機物をも目覚めさせていきます。

教育や福祉、心理学で使われる「問題行動」という言葉は、ある価値からの眼差しを内包しているが故に、じつはその眼差した人を照らし返す言葉でもあります。
日常は何によって作られているのか。
私たちの内にはどんな可能性が秘められているのか。
21世紀の表現とはどのようなものなのだろうか。

問題行動という言葉を凝視しながら、問題行動を巻き起こしていくそのさきに、新しい未来が開けてくるのではないかと考えています。

2020年5月

佐久間 新  Shin Sakuma

ジャワ舞踊家 1968年大阪市生まれ。ジャワ舞踊のからだを探求し、コラボ・即興・コミュニケーションに関わるプロジェクトを推進。からだに問い、生まれる言葉で話す「からだトーク」(大阪大学)、障がいのある人と新しいダンスを創る「ひるのダンス」(たんぽぽの家・奈良)等。共著に「ソーシャル・アート 障害のある人とアートで社会を変える」(文芸出版)。

砂連尾 理  Osamu Jareo

振付家/ダンサー 1965年大阪市生まれ。1991年寺田みさことダンスユニットを結成。近年はソロ活動を中心に、障がい者や高齢者、避難所生活者などとのプロジェクトも手がけ、アートと社会を繋ぐ活動を展開している。著書に「老人ホームで生まれた<とつとつダンス>—ダンスのような、介護のようなー」(晶文社)。立教大学映像身体学科 特任教授。

野村 誠  Makoto Nomura

作曲/ピアニスト 1968年名古屋市生まれ。個展「Organic Vegetable」(アートスペース虹:京都)、グループ展に、「肌理と気配」(ACAC:青森)、「Archway Sound Symposium」(Five Years Gallery:ロンドン)、「野村誠の音楽室」(広島市現代美術館:広島)、「Notations 21」(Jeanie Tengelsen Gallery他 :アメリカ)など。現在、日本センチュリー交響楽団コミュニティプログラムディレクター。