私の妻は、見ず知らずの人の家にいきなり訪ねて行くんですが、どう思いますか?
悩みの相談がないので、自分で相談します。
助手席のイウィンさんは時折いきなり声を上げることがあります。原因の一つは果物です。暖色系の丸いものを発見するセンサーのようです。豊かではなかった子供時代、弁当もお金も無かった時、パパイヤを切って売って小銭を稼いでいたそうです。来日してすぐの頃、山の家から街へ出る国道沿いで声をあげました。バナナの木があったからでした。
それから何年も経って、インドネシア人女性の集まりで料理をする機会がありました。もち米の蒸し料理をするのに、バナナの葉が欲しい、例の家に行ってみようと言います。いきなり訪ねるのもどうかと思いましたが、イウィンさんはあまり気にしない様子で家の呼び鈴を押しました。もう10年くらい前のことだったでしょうか。
最近また久々にバナナの葉が欲しくなり、その家に行ってみました。覚えていてくれたようで、どうぞどうぞいくらでもどうぞと、庭へ通してくれました。案ずるより産むが易しです。
インドネシア人は、人との関わりを見つけるのが得意です。留学中、それが煩わしく感じられる時もありました。もう一人にさせてくれ〜〜、と。それでも留学中に寂しく感じることがなかったのは、彼らのその性格のおかげだったと思います。日本でも、庭の植物、ペット、あかちゃんや小さい子どもがいれば、見知らぬ人と話がはじめやすいと思います。バナナの木の家の方も、バナナの話ができてうれしそうでした。あなたも妻のおかげで、知り合うことなかった人と話すことができ、その上美味しい料理も食べられることになったのですから、悩むことはないと思います。